【HBA王道セミナー】すべての理解は基礎理論の理解にあり!!基礎理論の
理解無しに応用など存在しない。




                            2006.7.27発行
■□ハスイ・ビジネス・アカデミー(HBA)■□■□■□■□■□■□■□■
□■(HBA/TOP)□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
      
       公認会計士受験講座/財務諸表論・監査論

        〜 本質を極めよ、王道を行け!〜

□■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■□

 はじめてご登録いただいた方へ!

 諸君、君たちの勉強方法はまちがっていないか?
 これだけは伝えておきたい。
 暗記だけでは、本当の勉強はできない。
 具体的にいえば、早期合格はできない。

 たとえば講師に“本質的な実力”が伴っていなかったとしたら、
 果たしてどういう授業風景となるか。
 そう、“本質的な説明”ができない。
 ではどうするか。もうおわかりだろう。彼は諸君に『暗記』を強要すること
 になる。

 当アカデミーでは、そういった受験業界の風潮を打破したい。
 このメールマガジンでは、Q&A形式で諸君を応援する。
 まずは基礎。
 基礎を固めるため、ぜひ当アカデミーの問題に挑戦してもらいたい。
 
===========
 本質的な4つの提案
===========

 当アカデミーでは、受験生諸君に以下の4点を提案したい。

 (1) 体裁の口上なんかに惑わされるな!
 (2) 暗記で受かるのは偶然しかない!
 (3) 暗記は勉強ではない。勉強の手段だ!
 (4) 良質の資料によって、良質な指導を受けよ!

 いちど試してみて欲しい。
“本質”は、HBAにしかない・・・!



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
《第9講》リスクの評価のプロセスは“暗記”していても、リスク・アプロー
     チにおけるリスクの評価の意義は知らない?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◇《今日の一言》◇ =============== =============== =============== 


◎監査戦略における多様化


 前信で、リスク・アプローチは監査戦略を追求する監査手法であること。そ
の監査戦略とは、監査計画の立案において、財務諸表監査の目的を達成するた
めの最も効率的な監査の実施を追求するために代替諸案を探求し、予測し、評
定し、そして決定することであることを説明した。

 (1) つまり、このような監査戦略は、一方において財務諸表監査の目標達成
のための有効性を最優先事項としなければならないとともに、他方において監
査の実施におけるコストとベネフィットを比較して効率性をも追求しなければ
ならないのであり、このことは、被監査会社のおかれた状況に最も適合した監
査計画の立案を必要とすること。

 (2) ところが、被監査会社のおかれた状況は、すべて千差万別であり、独特
のものであるので、監査計画は多様化せざるを得ない、つまり、「監査のオー
ダーメイド化」をしなければならない、というところまで説明したと思う。

 またそのなかで、この監査戦略のコアとなる有効性と効率性について触れ、
(3) 監査の有効性は、財務諸表監査の目的として、財務諸表の信頼性について
社会的に要求される一定水準以上の保証を達成する監査を実施することであり、
したがって、監査人の実施した監査が、このような保証水準を達成することが
できない場合には、当該監査は不満足な監査として、監査人は責任を追及され
ることになること。

 (4) これに対し、監査の効率性は、同一監査目的に対する代替手続の選択で
あり、同じ目的を達成することが出来るならば、費用、労力あるいは時間がか
からない方法を選択することが合理的であること。
 したがって、財務諸表上の重要な虚偽記載となる重大な虚偽および誤謬の存
在の可能性がない場合に、それらの存在を前提とするような監査手続を実施す
ることは、過剰監査に結果し、効率性に反すること。

 この有効性と効率性との最も有利な結合を意図する監査戦略は監査において
当然要求されるべき合理的思考であると。


 そしてさらに、上記のように監査の有効性と効率性とを考慮し、状況に最も
適応した監査計画を立案することは、当然の合理的思考であるが、それが監査
戦略としてあらためて強調されなければならないのは、これまでの監査計画の
標準化思考に対する反省であること。


 以上が前信での内容の総復習といったところであろうか。


 さて、そこで、今回は、監査リスク・アプローチの体系がどのような思考に
よって構築されているのか、ということについて少し見てみよう。

 何故なら、リスク・アプローチがどのような思考に基づいて体系が構築され
ているのかを知らなければ、例え、固有リスク、統制リスク、さらに統制リス
ク(発見リスク)、監査リスクなどの意義・定義・内容をいくら暗記したとこ
ろで、現行監査制度で実施されている監査リスク・アプローチは何も見えては
こないからだ。

 このことは、本メールマガジンの読者で会計士試験の受験生ならば、多少に
関わらず、「いくら理解しようとして勉強をしても、分・か・ら・な・い・・
・?」という思いをずっ〜と持ち続けてきたであろうはずだから。


 だから、そのリスク・アプローチの本質に少し触れてみようというわけだ。




◎分化(多様化)と統合


 財務諸表監査の方法の多様化によって、多くの監査計画が分化(それぞれの
クライアントごとに適合する監査計画を策定するという意味。つまり、オーダ
ーメイド化するということ)するが、これらの多様化した監査計画を分化した
ままにしておいては、財務諸表監査は社会的信頼を得ることが出来ない。

 それぞれ多様化した監査計画に基づいて実施された監査によって、それぞれ
別々の規準で財務諸表の信頼性の程度が公表されても「信頼性」の意義がない
からである。

 そこで多様な監査計画でありながら、社会的な信頼を得ることが出来るよう
な共通的な質が、多くの監査計画の全てに充たすことができなければならない
のである。この役割を果たすものが、監査の保証水準というわけだ 。

 すなわち、どのように監査計画が分化(オーダーメイド化)によって多様化
したとしても、多様化した監査計画の全てが、財務諸表監査に社会的に要求さ
れる保証水準を確保するものでなければならないということである。

 換言すれば、多様化した監査計画は、一定の保証水準によって「統合」され
るということだ。このような監査計画の分化(多様化)と統合、すなわち、一
定の保証水準を保ちながら監査計画の多様化を可能にする理論的基盤を提供す
るものが監査リスク・モデルなのである。

 つまり、監査リスク・モデルは、分化(多様化)と統合の思考を監査計画に
おいて理論化したものということができる。


 これをもうちょっと分かり易く、というかイメージがし易いように説明して
みよう・・・。

 そこで出てくるのが、私が授業での説明で使う「オーダーメイド監査」とい
う表現である。


 例えば、洋服(スーツ)を購入する場合を考えてみよう。デパートなり、洋
服の専門店なり、または、洋服のディスカウントショップなりにいって、それ
なりに体形別に分けられ(よくあるのが、A型、B型、AB型などといったも
の)、ハンガーに吊してある洋服の中から、既存の柄で自分の気に入ったもの
を選ぶ、といったのがごく一般的なスーツの購入風景であろう。

 ところが、例えば私の場合などは、事はそう簡単にはいかないのである。A
型では、とりあえず、ウエストまわり、腕のリーチなどはほどほどに合うのだ
が、決まって胸まわりがきつい。では、AB型(B型の体形ではない、と自負
している)ではどうか、というと胸まわりは十分だが、ウエストはダブダブ、
腕まわりも一回りぐらい大きい、したがって、全体的にダブついた感じになる。
という具合で、どうも既製服というのは昔から合った験しがないのである。

 そこで、イージーオーダー、もしくはフルオーダーということになるのだが、
オーダーメイド(とりあえず説明の便宜上フルオーダーということにする)と
いうことになれば、当初から身体の各所の寸法を細かく取ることになる。例え
ば、私の場合、ゴルフを学生時代からやっているセイか、左腕の方が右腕より
も2センチぐらい長い。また、普通(自分の普通、つまり、意識しないでとい
う意味)に立った場合、右肩よりも左肩が少し高くなる。つまり、右肩が少し
落ちているのだ。これも、ゴルフのセイもしれない。

 また、この寸法を取るときに、仕立てる職人(優秀な職人ほど)は、その顧
客といろいろと話をしながらことを進めることが多い。

 それは、寸法以外の情報を入手するためである。つまり、普段どのように動
いているのか。立っている時間が長いのか、座っている時間の方が長いのか。
また、仕立てようとする洋服をどのような時に使用するのか。仕事上などで特
別な動きをすることがあるか、さらに顧客の好みはどうか、などなど様々であ
り、それらの情報と寸法の情報とを基に、仕立てる洋服の様々な箇所に工夫を
するわけである。

 オーダーメイドの場合、生地、柄などといったものも選ぶ対象の多様性は既
製服の比ではない。

 がしかし、服を制作する上で一番肝心なのは、各部の寸法(スーツの機能性
に重大なる影響がある)であろう。

 仕立屋は、当初に計った身体の寸法を基に、さらにその時の顧客との会話の
中から必要な情報を選別しながら、どのように洋服を仕立てるかを決めていく
わけだ。

 つまり、私の場合を例にとれば、全体的なフォルムは既製服のA型をイメー
ジし、胸まわりは、既成のものよりも大きく、そして右腕よりも若干長い左腕
の部分は柄を合わせながら腕のくるぶしのところで両袖が揃うように寸法を決
め、どうしても矯正できない右肩の下がり部分は、右肩の部分だけパットを入
れる、といった具合である。

 さらに、私の日頃の動きを考慮して、ベンツ(車ではなく、背面下部のスリ
ットのこと)をセンターにするのかサイドにするのか。最近のものではベンツ
を入れないものが多いが、私の場合は不向きである。


 さてさて、勘違いをしてもらっては困るが、洋服をオーダーメイドするのが
良いという話をしているわけではない。

 監査の話である。上記をただ面白そうに読んでもらっては困るのだ。


 このように、洋服のオーダーメイドの場合、まず、身体の寸法を適度に詳し
く測った(さらに会話もした)訳だが、これは、監査リスクアプローチの場合、
リスクの評価(あえて言うならば固有リスク)に当たる。クライアントの状況
を的確に把握することであり、どのようなリスク領域が存在する可能性がある
のか、それらのリスクの程度はどうであるのか、などの情報を入手するという
ことである。


 そもそも監査リスクアプローチは、ビジネス・アプローチを前提とする。つ
まり、社会の環境を十分に把握し、経済の動向、業界の動向、そのリスク等を
掌握して被監査会社の状況を適切に把握し、そのリスク領域を十分に評価して
監査資源の適切な配分を可能にし、監査の有効性と効率性の両立を可能とする
監査の展開を指向するものである。

 つまり、監査リスク・アプローチの場合では、まずビジネス・アプローチの
観点から、当該クライアントはどのような業界に属する企業なのか、その業界
は現在どのような環境にあるのか、また、過去にどのような経緯があるのか、
リスクの元となるような事情が存在しないか、などの情報を把握し、その情報
を前提に当該クライアントの個別的な状況を把握、判断するというわけである。


 例えば、少し前の銀行業界であれば、不良債権を大量に保有しているという
のが業界全体の環境であり、さらに、その貸倒の可能性は非常に高いというリ
スクが存在し、したがって、不良債権の処理について監査上相当高いリスクが
存在する可能性があるとシミュレーションすることになる。

 固有リスクの評価の意味は、そのような前提の下に、当該クライアントにど
のような(当該クライアント固有の)リスク領域が存在しているのかを把握す
ることである。


 すなわち、洋服のオーダーメイドにおける当初の寸法取りとその時の会話(
寸法以外の情報の入手)がこれに該当することになる。

 洋服のオーダーメイドのプロセスの場合は、その後、ある程度の洋服の形が
出来上がったところで、一度仮縫いなる行程がある。洋服を発注した顧客が仮
縫いした洋服を実際に着てみて不具合がないかどうかをチェックするわけだ。

 この仮縫いでは、読んで字のごとく当該洋服は正に「仮縫い」してあるので
あり、両袖や前後の胴の部分ではパーツ間はピンで留めてあるだけで縫い合わ
せていない。それは、注文主が仮縫いの時に実際に着てみて、不具合がある場
合には、その箇所を修正することを可能にするためである。

 これは、監査の場合についていえば、クライアントに対応すべく監査計画の
修正をするプロセスということになろう。

 そうして、多い場合には2〜3回の仮縫いを経て、仕上げの行程へと進むわけ
である。


 さて、少しイメージが湧いてきたであろうか?

 では話をまとめよう。


 洋服のオーダーメイドの場合では、当初、個々の顧客の状況に対応した寸法
等によって洋服の各パーツを仕立てていく。それは、顧客のそれぞれに応じて
多様であり、これは寸法の多様化という意味で「分化」のプロセスである。

 しかし、寸法は顧客に合わせて千差万別であっても、それらのパーツを縫い
合わせて仕上げられた洋服(スーツ)は、スーツとして共通の仕様を保持して
いなければならないのであり、誰が見ても「スーツ」だと認定できる水準に仕
上がっていなければならないのである。

 つまり、オーダーメイドしたスーツは、寸法は個々の顧客に合わせて多様化
するが、仕上がりは、誰が見ても「スーツ」として認められるような質(デザ
イン、機能等)を保持しているものでなければならないのである。それらは、
全て「スーツ」しいう水準によって「統合」されることになるわけだ。


 オーダーメイドした監査は、それぞれのクライアントごとに千差万別の内容
であり、その意味で「分化」(多様化)するが、その「分化」した監査を社会
的制度として承認されるフレームワークにするのが「統合」ということであり、
それは一定の監査の保証水準(高い保証水準)の確保によって実現されること
になるのである。

 つまり、リスク・アプローチでは、「監査の保証水準」が監査全体を規制す
る基準となっているということである。


 以上が分化(多様化)と統合である。今まで“暗記”していた部分が一つの
体系上に見え始めたのではないだろうか?


 このような前提の議論の理解がなければ、監査リスク・アプローチなどとい
っても、リスクのかけ算をただ知っているだけのものでしかない。リスク・ア
プローチの体系など絶対に見えてくることなど無いのである。

 だから、いつものことだが、理解が出来ない(理解出来るような説明を受け
られない)から、“暗記”をせざるを得ないのであり、理解の無い“ままに暗
記”を勧める無知な講師の“お薦め”が、早期合格にとって必然性があること
のように思えてくるのである。

 何と不幸なことか?それでラッキーにも合格していく者が、将来のリスク・
アプローチの担い手などに成れるわけもなかろうが・・・。

 試験の実施側の責任である。



 では、ここで、監査リスク・アプローチにおける基礎的な概念について確認
をしておくことにしよう。

 特に上記を読んできた会計士の受験生の諸君には、以下の説明が今までとは
違って読み取れるはずである。受験生にとっては字面は既に“お馴染み”のは
ずではあろうが、内容は初めて「理解出来る」ということになるであろうから。

 これまでの前提議論(説明はいたって簡単ではあったが)が理解出来ていて
初めてリスク・アプローチの第一歩が読み取れることになるのである。

 したがって、以下では少し堅く説明してある。しかし、ここまで読んできた
今の諸君たちには読み取るのに苦労はしないはずである。





◎監査リスク(原則として会計士試験の受験生以外の読者のために記しておく。
受験生の諸君は既に知っているはずであろう)

 監査リスクは、監査計画を分化させてきた固有リスクの評定、統制リスクの
評定および摘発リスク(発見リスク)の評定の諸要素の統合概念である。

 ※「固有リスクの評定、統制リスクの評定および摘発リスク(発見リスク)
の評定」について詳しくは、HBAのテキスト及び解説ということになる。た
だし、上記の説明からある程度の察しはつくはずである。


 監査リスクとは、監査人が意見を表明した財務諸表に、監査人が気付かなか
った重大な虚偽記載が存在しているかもしれない危険である。

 したがって、監査人が財務諸表に対して与える保証は、確率的な表現によれ
ば「1−監査リスク」であり、リスクは信頼性の保証の補数として位置付けら
れる。そこで、監査人が財務諸表に対して(無限定の)適正意見を表明するた
めには、監査リスクを社会的に認められる一定の許容水準以下におさえること
が必要である。

 このような監査リスクは、全体としての財務諸表のレベルにおける監査リス
クと個々の財務諸表項目を構成する勘定残高または取引種類のレベルにおける
監査リスクに分けられるが、全体としての財務諸表に意見を表明する場合の監
査リスクは、財務諸表を構成する勘定残高または取引種類の監査の場合の監査
リスクを統合したものである。

 この監査リスクは、固有リスク、統制リスクおよび摘発リスク(発見リスク
)の3つに分けられる。

 このうち固有リスク〈IR〉とは、内部統制による統制が存在しなかったと仮
定した場合に、重大な虚偽記載を発生する可能性のある状態および諸特徴であ
る。それらから財務諸表上に落ちてくる重大な虚偽および誤謬に対する統制と
して、経営者による内部統制と監査人による監査が位置付けられる。

 経営者によって設計され、かつ運営される内部統制は、重大な虚偽および誤
謬を統制によって減少させるが、そのような内部統制をもくぐり抜ける重大な
虚偽および誤謬の存在の可能性が統制リスク(発見リスク)(CR)である。

 そして、この固有リスクと統制リスクを合わせた結合リスク〈IR×CR〉が、
監査人の監査以前の重大な虚偽および誤謬の摘発リスク(発見リスク)である。
この結合リスク(固有リスクと統制リスクを結合したリスク)は、監査人にと
っては所与の条件であり、監査人がこのようなリスクを統制(コントロール)
することはできず、ただ評定することができるだけである。

 したがって、監査人は、内部統制をくぐり抜けてきた重大な虚偽および誤謬
を、監査によって摘発しなければならない。このために監査人によって計画さ
れ、かつ実施される実証的監査手続には、分析的手続と取引および残高の内容
の詳細な監査手続の2種類がある。

 しかし、監査人による2つの監査手続の実施のどちらにおいても、重大な虚
偽および誤謬を摘発しそこなう危険がある。これらは分析的手続リスク(ARR)
と詳細監査手続リスク(TDR)と呼ばれ、これら2つの統合リスクが摘発リスク
(発見リスク)(DR)と呼ばれる。

 このような摘発リスク(発見リスク)は、監査人が統制(コントロール)す
ることができる危険であるので、これらについての監査人の判断および意思決
定は、監査計画における有効性および効率性に対して重大な意味を有する。

 そして、このような監査人による監査をくぐりぬけて財務諸表に到達してし
まう重大な虚偽および誤謬の危険が監査リスクである。

 これに対しては「1−監査リスク」が、監査人が与える保証である。すなわ
ち、監査人は、重大な虚偽および誤謬が存在する危険を、一定の社会的に許容
される水準にあることを保証しなければならないのである。





◎監査リスク・モデルによる分化(多様化)と統合

 監査リスク・モデルの有用性は、基本的には、このモデルによって監査リス
クの構成要素の相互関係が明らかにされることにある。つまり、監査リスクの
相互関係によって明らかにされた被監査会社の状況に対応して、最も有効かつ
効率的な監査計画を立案することができるのである。

 したがって、監査リスク・モデルは、監査計画の分化(多様化)と統合を可
能にするものである。

 まず、(1) 被監査会社の状況を分析することによって、監査人が対応しなけ
ればならない被監査会社の状況におけるリスクの種類および大きさが明らかに
される。

 すなわち、固有リスクと統制リスクの関係によって重大な虚偽および誤謬の
摘発リスク(発見リスク)の種類および大きさが明らかになる。このような情
報を利用して、監査計画を多様化することができる。

 (2) 上記の情報に基づく被監査会社の状況に対応して、監査人は、分析的手
続および取引および残高の内容の詳細監査(精細監査ではない)によって構成
される実証的監査手続を実施しなければならない。このような実証的手続に許
容できるリスクが摘発リスク(発見リスク)である。

 したがって、もし、監査人が与える保証(1−監査リスク)の水準が与えら
れれば、摘発リスク(発見リスク)は、重要な虚偽および誤謬の発生リスクに
反比例的に決定される。

 そのことは、監査リスク・モデルにおいてDR=AR÷(IR×CR)という等式に
よって示される。

 この関係式によって、重大な虚偽および誤謬の発生リスクが高ければ高いほ
ど、実証手続の摘発リスク(発見リスク)は低く抑えられなければならず、逆
に、重大な虚偽および誤謬の発生リスクが低ければ低いほど、摘発リスク(発
見リスク)は高いことが許容される、ということが理解できるはずである。

 そこで、AR=IR×CR×DRの式において、監査リスク(AR)が社会的に許容され
る水準を超えるような結果になる実証的監査手続の実施は、不充分な監査とし
て、監査の有効性に欠けるので、監査人は責任を追及されることになる。

 逆に、AR=IR×CR×DRの式において、監査リスクが社会的保証水準を大きく
下回るような実証的監査手続の実施は、過剰監査として、監査の効率性に反し、
監査人の報酬の回収を困難にする結果を招く。

 このように監査リスク・モデルによって多様化される監査計画は、社会的に
認められる監査の保証水準を一定とすることによって統合されるのである。




 いやッ、また長くなってしまった。


 今回はこの辺にしておくことにする。


 会計士試験の受験生の諸君は特に、理論的学習の必然性を少しは感じてくれ
たであろうか?


 理論を勉強することの本質的な面白さは、その系譜の必然性を知るところに
あるといっても過言ではない。

 そして、本質を知ることは、さらなる理解を加速させることにもなるのだ。


 努々、“暗記が受験勉強にとってベストだ”などと思うことなかれ!!
と、繰り返し言っておくことにする。



 次回は、監査リスク・アプローチにおいて必須の手続として他の実証手続と
は次元を異にして特別に位置づけられる分析的手続について若干の確認をして
みようとかと思う。



 では、また次回に。





◇ =============== =============== ============= =================

◇ =============== =============== ============= =================





◇◇◇今回の問題◇◇◇

◇《問題》◇ =============== =============== =================== ===

 現代監査は被監査会社の状況に適合的な監査実施のため、監査計画が多様化
するが、この多様化した監査計画に基づいて実施された監査が社会的信頼性を
確保するためにどのような概念を取り入れているのか説明しなさい。
(11行)





 〜問題の確認項目〜

○監査リスク・モデルによる分化(多様化)と統合が理解できてているか?
○「分化」(多様化)とは具体的に何か?
○「統合」とは具体的に何か?



 ・解答行数:上記各問題文末参照。


 ・満点  :20点。







 解答・解説(一部または全部)は次回のメールマガジンにおいて掲載する予
定です。
 また、次回メールマガジンの発行日以降、当アカデミーの『HBAメールマ
ガジン』のコーナーにも解説を掲載します。
 
 HBAメールマガジンのコーナーはこちら >>>

 ※問い合わせ等について
  ⇒ ホームページ上のフォームをご利用ください



◇ =============== =============== ============= =================

◇ =============== =============== ============= =================



◆◆◆前回の問題の解答・解説◆◆◆

◆《問題》◆ =============== =============== =================== ===

 現代監査の手法である監査リスク・アプローチに関して以下の問に答えなさ
い。

問1
 監査戦略とは何か具体的に説明しなさい。(6行)

問2
 監査戦略の観点から、監査計画の立案おいて追求されるべき監査の(1)有効性
と(2)効率性について具体的に説明しなさい。((1)6行/(2)6行)





 〜問題の確認項目〜

○監査戦略を具体的に定義できるか?
○監査の有効性を具体的に説明できるか?
○監査の効率性を具体的に説明できるか?



 ・解答行数:上記各問題文末参照。


 ・満点  :問1 10点。
      :問2 (1)15点/(2)15点。




◆【解 答】◆◆=============== =============== ============ ==========

問1
 監査戦略とは、監査計画の立案において、財務諸表監査の目的を達成するた
めの最も効率的な監査の実施を追及するために代替諸案を探求し、予測し、評
定し、そして決定することである。このような監査戦略は、一方において財務
諸表監査の目標達成のための有効性を最優先考慮事項としなければならないと
ともに、他方において監査の実施におけるコストとベネフィットを比較して効
率性をも考慮しなければならない。このことは、被監査会社のおかれた状況に
最も適合した監査計画の立案を必要とする。(10点)


問2
(1) 監査の有効性は、財務諸表監査の目的として、財務諸表の信頼性について
社会的に要求される一定水準以上の保証を達成する監査を実施することであり、
このような社会的な監査保証水準を達成し、重要な虚偽および誤謬の存在を見
逃してはならないということである。したがって、監査人の実施した監査が、
このような保証水準を達成することができない場合には、当該監査は不満足な
監査として、監査人は責任を追及されるということである。(15点)

(2) 監査の効率性は、同一監査目的に対する代替手続の選択であり、同じ目的
を達成することが出来るならば、費用、労力あるいは時間がかからない方法を
選択することが合理的である。したがって、財務諸表上の重要な虚偽記載とな
る重大な虚偽および誤謬の存在の可能性がない場合に、それらの存在を前提と
するような監査手続を実施することは、過剰監査に結果し、効率性に反するこ
とになる。(15点)




 
◆【解 説】◆◆◆ =============== =============== ============ =======

【出題の趣旨】

 現代監査の手法である監査リスクアプローチに関しては、いろいろな角度か
ら出題することが可能であるが、本問はその真髄を問うものである。

 そもそも監査リスクアプローチは、訴訟爆発によってその責任を全面的に問
われたアメリカで、訴訟に勝つ監査、つまり監査戦略という視点から、イクス
テーション・ギャップ(期待ギャップ)に対応するための手法として指向したも
のである。

 それは監査の有効性と効率性の両者の追求の必要性から、両者を最有利結合
することが可能な監査リスクアプローチを監査戦略監査戦略の追求という観点
から展開するものである。

 監査リスクアプローチは、本来ビジネス・アプローチを前提とする。つまり、
社会の環境を十分に把握し、経済の動向、業界の動向、そのリスク等を掌握し
て被監査会社の状況を適切に把握し、そのリスク領域を十分に評価して監査資
源の適切な配分を可能にし、監査の有効性と効率性の両立を可能とする監査の
展開を指向するものである。

 すなわち、被監査会社の状況の十分かつ適切な把握なくして監査の有効性と
効率性の両立は成しえないということである。この視点が十分理解されている
なら、監査の有効性と効率性の両立を可能とする監査手法である監査リスクア
プローチにとって、リスクの評価、特に監査人にとって所与である固有リスク
と統制リスクの評価が決定的な意味をもつことが理解できよう。本問はそれを
問うている。

 監査リスク・アプローチは、「リスク」という概念を監査に持ち込んで計量
化し、ともすれば抽象的な概念である適正性を補数であるリスクによって表現
することによって具体性を持たせ、監査水準を充たす十分な監査の水準を実践
的に示したところに最大の意義がある。単にリスクモデルの掛算や割算の式を
覚えても本質を理解することはできまい。十分に復習しておく必要がある。



【解説】

問1
 監査戦略という言葉は、不思議なことに一般には珍しいらしい。これは異な
事である。なぜなら、監査リスク・アプローチは監査戦略を追求する監査手法
であり、したがって、監査資源の適正配分を可能にすべく状況の把握とリスク
の評価を積極的に行う監査手法であるのである。この視点がなければ、監査リ
スク・アプローチ以前との違いは、単に手続的な問題として理解されよう。そ
こが、決定的に誤りである。


問2
 本問は、監査の有効性と効率性を監査を実施する監査人の立場からどのよう
に追求すべきかを問うている。したがって、単に問題点の指摘と説明だけでは
解答にはならない。監査の実施上どのように監査の有効性と効率性は理解され
監査計画に盛り込まれるのかという視点がなければならないのである。





★★★応用問題の参照★★★=============== ============= =============

 実は、上記の問題のつづきがある。本来的な理解からすれば、この応用問題
の内容の理解があって初めて、固有リスクの評価の意義、重大性やそのプロセ
ス、さらに、統制リスクの評価の意義、重大性やそのプロセスの理解が本質的
にできるものである。

 ただし、上記についての解説が長きにわたることと、会計士試験の受験生で
はない読者の方を考慮して、残念ではあるが省略してある。会計士試験の受験
生以外の読者の方にはかなりの応用問題というレベルである。

 逆に、公認会計士試験の受験生諸君は理解していなければならない内容であ
る。なぜならば、その理解がなければ、リスクアプローチにおける固有リスク、
統制リスクの評価の意義とそのプロセスの本質的な理解が無いことになるから
である。

 特に、統制リスクの評価プロセスについては、“暗記”以外に手段が無くな
るのだ。

 以下にその問題を示しておくので、特に会計士試験の受験生は解答作成にト
ライしてみてほしい。


 解答は、次回のメールマガジンに掲載することにする。



★《問題》★ =============== =============== 

問3
 現代監査は監査戦略の観点から監査手法として監査リスク・アプローチを採
るが、そこでは監査の有効性と効率性の観点から被監査会社個々の状況に適合
する監査が計画・実施される必要がある。そのために監査計画は多様化しなけ
ればならないが、この監査計画において考慮すべき(1)固有リスクと(2)統制リ
スクについての多様化の思考について簡潔に説明しなさい。
(12行/(2)11行)




・解答行数:上記各問題文末参照。


 ・満点  :問3 (1)20点/(2)20点。




◆ =============== =============== ============= =================

◆ =============== =============== ============= =================


 メールマガジンのバックナンバーは、当アカデミーの『HBAメールマガジ
ン』のコーナーでもご覧になれます。
 
 HBAメールマガジンのコーナーはこちら >>>

 ※問い合わせ等について
  ⇒ ホームページ上のフォームをご利用ください



◆ =============== =============== ============= =================





━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

発行者     : ハスイ・ビジネス・アカデミー(HBA)
ホームページ  : HBA/TOP
 
※メルマガの購読中止は上記ホームページでもおこなうことができます。

※まぐまぐ!サイトでのメルマガの購読中止はこちら >>>



□ 雑 感 □===========================

◎PCは不可解である。

 技術の最先端を行くこの機器は、デジタル的要素が満載であり、すべてが計
算しつくされているといっていい。

 しかし、そのすべてが二進法によってコントロールされている(だからこそ
CPUの性能が良くないとレスポンスが遅いことになる)のがやはり不可思議
であり、CPU等の情報処理能力が今のような状況に成っていなければ、今私
の前にあるデスクトップのPCはもとより、さらに隣の部屋に置いてあるノー
トPCなど存在するはずもないのである。


 ところで、私は資料を作成する場合は、そのほとんどを夜中(午後11時ぐら
いから翌日の朝7時ぐらいまで)に行うことが多い。

 本メールマガジンも例外ではない。

 それは、私にとって一番集中出来る時間帯だからなのかもしれない。

 だから、毎度メールマガジンの発行が午前様になる。

 ところで、私の場合PCへの入力は「カナ入力」である。周りの知人には。
「え〜、カナ入力??!」と、ほとんど呆れられている。

 がしかし、慣れたものはそうそう簡単に変えられるものではない。

 論理的に考えれば、キーのプッシュが1回で済むカナ入力の方が、一般的に
は最低2回以上プッシュしなればならないローマ字入力より勝っているはずで
ある。

 ところが、現実はほとんどの場合逆だ。

 ほとんどの場合と言ったのは、私がよく知る非常に優秀なオペレーターの二
人が私と同じカナ入力だからだ。

 彼女たち(そう女性である)は、時として私がしゃべる原稿を即座に入力し、
誤植(今や一般には、この用語の出所は馴染みが無いものであるが)がほとん
ど無いのである。

 仕事をしてもらう時はいつもそのキーさばきに関心するばかりである。

 しかし、私の集中出来る時間帯に彼女達に仕事をしてもらうわけにもいかず、
したがって、当然夜中は自分で入力をすることになる。

 が、入力は大の苦手である。

 そもそもが、PCはアルファベット系の国で開発されたものでもあり、日本
語など超レア・ケースであろうから、配慮のカケラも無いのであろう。

 カナ入力の場合は特にそれを感じる。


 現在私にとって必須のアイテムとなっているPCだが、私自身はあまり好き
なジャンルのものではない。

 ところが、最近、そのPCとちょっとしたコミュニケーションをするような
場面を体験している。

 私のPCだけがそうなのであり、それはハードーやソフトの問題であるのか
もしれないのだが、夜中じゅうPCを使って資料作成をしていると、午前4時
を過ぎるぐらいから、突然、文字変換に異変が起きるのである。

 今まで、一度も変換したことの無いような奇想天外な用語に変換するのだ。

 今時、携帯でも学習能力があるというのに、私のPCは午前4時頃からバカ
になるらしい。

 安心しきって入力を続ける私は、一区切りついたところで読み返し、愕然と
するのである。

 思わず、「おまえ、何やってるの? そうじゃないだろうが?」、「今まで、
ちゃんとやっていたのに、突然どうしたの?」とPCに問いかけてしまうのだ。

 泣く子眠る丑三つ時は過ぎてはいるが、夜中というか明け方というかの頃に
である。

 試しに2〜3回続けて同じ用語を入力してみると、ちゃんと変換するのだが、
異なる用語を入力した後にもう一度その用語を入力してみると、以前にも増し
て奇妙奇天烈な用語に変換するのだ。

 思わず「プッ!」と吹き出して、続けて「ゲ?!」である。「本当に、どう
しちゃったの?」である。

 以前は、この症状に陥った時は、仕事に集中している時間帯でもあり、PC
にかなりムカツイタのだが、最近は、あることに思い当たった。


 それは最先端技術の粋を集めた機器ではあるが、作ったのは、言わずと知れ
た人間であるということだ。

 PCといえども人間が作ったもの。だからというのは理由にもならないかも
しれないが、機械なのだが、ある意味とても人間ぽい側面を持っている、とい
うことである。

 つまり、PCも「疲れる」のではないか?

 まったくの私の勝手な解釈である。

 笑って頂いて結構である。


 私は、仕事に集中しきっていて、眠気も疲れもまったく無い時間帯。事実、
疲れを感じてくるのは通常朝の7時30分を過ぎる頃からである。

 でも、PCは私の仕事を手伝っているだけだ。人間だったら「そりゃー、疲
れるだろうな!」と思うのである。


 この状態に陥ると、私のPCはしばらくご機嫌が直らない。再起動をしても
状態はまったく変わらない。

 まるで、PCが「疲れたー、ちょっと休ませてくれイ」と訴えているようだ。


 突然、私のすべての集中力が切れ、しばらくは仕事を開始できなくなる。


 こんな時は、しばしコーヒーブレイクである。

 前に記した小豆の最中にコーヒーか、コーヒーフロートで一息つくことにし
ている。


 勿論、これは、私のPCの不具合のセイなのであろう。

 個人的なサポートを受けて、PC素人のくせにはPCのカスタマイズなども
結構しているので、そのためなのかもしれない。

 ただ、そうはいうものの、現在のご機嫌の良い時のPCには、大満足をして
いる。だから、夜中に突然、機嫌が悪くなって、ストライキを起こしてもムカ
つかないことにしたのだ。


 「は〜いはい?!分かったよ。休憩だろう?!」

 などと独り言をいいながら、しばしのコーヒーブレイクである。

 不思議なことに、しばしのコーヒーブレイクの後に仕事を再開すると、私の
PCは何事も無かったかのように、実にご機嫌良く動作するのだ。

 まか不思議な現象である。


 最近、浮気しようかな、とも思うのだが、馴染んだ女房みたいに愛着があっ
て他の機器への買い換えも決心できないでいる。

 PCは勿論複数台ある。どれにも愛着があって、台数は増やせても捨てられ
ないのだ。

 PCが複数台あるのは、私の場合、PCが使えなくなることは仕事上致命的
であり、データのバックアップは必須だからである。

 データのバックアップは外付HDDやネットワークHDDを利用すれば簡単
に解決できるが、PCの場合はそうはいかない。

 同じ状態で使用できるPCが最小限3台は必要だ。

 どのPCを使うか、または、その組合せはその時の気分と仕事の内容による。

 仕事に集中できない時は、気分を変えるために、違うPCを使うこともしば
しばである。

 しかし、不思議なことに上記の現象は私の保有するどのPCでも起こるのだ。

 サポーターも時々「不思議ですねー、としか言いようがないですね」と戸惑
っている。

 そもそも、サポートを受けている時には、そんな症状は出ないのだから無理
もない。


 というわけで、今日の夜中も、私のセイではない突然のコーヒーブレイクを
挟みながら、仕事を続けているというわけである。

 やはり、人間が作ったものは人間らしい?性格をどこかに持っているのだろ
うか?

 まァ、考え過ぎかもしれません。はははッ・・・。





 ではまた。





===================================



暗記を強要される受験勉強って間違っている。HBAでは公認会計士試験の早
期合格を目指す諸君に、本質的な講義内容を提供します。当メルマガの有意義
な問題にチャレンジして、早期合格を目指しましょう。